森山愛子の歌謡劇場 柔 第ニ回
担任の横山マリ先生がそう言ったにもかかわらず、この小学校の校門には変な人が待っていた。カラテカの矢部は裏番五人組に見つからないように、ねずみのようにこっそりと
校門まで行ったのだが、変な人に声をかけられた。
君、柔道をやりたくないかい。
おら、暴力は嫌いだ。
じゃあ、君をいじめていた小学生でかまきりの構えをしていた子供の名前を教えてくれないか。
おら、なにもしらねえだ。
そう言うとカラテカの矢部は家に向かって走り出した。家に帰ると矢部にはジュースの空き缶をつぶすという仕事があった。
お前、学校でいじめられてねえか。そんなことねえよ。カラテカの矢部は小学校に行きたいと思ったことはなかったが、一つだけ楽しみがあった。
隣からこぶしをきかせた歌声が聞こえてきた。
隣の家には小学生ながらプロの演歌歌手としてデビューしている森山愛子ちゃんが住んでいる。小学校に行くと森山愛子ちゃんと話しができるからだった。
その森山愛子ちゃんも悩みがあるようだった。
日本武道館を貸し切りでコンサートを開きたいという思いだった。
しかし、それには金がいる。
そんなとき、教室に変なビラを持ってきた小学生がいた。
おい、おい、大変だ、大変だ。
柔道日本一大会が開くんだって、優勝者は日本武道館を一週間貸し切りにしてくれるんだって。
おら、柔道をやるぞ。カラテカ矢部はつぶやいた。
しかし、カラテカ矢部はにやりと桜井翔が悪魔のようなほほ笑みを浮かべていることを気づかなかった。